森の中央にある大きな樫の木のうろ、そこに老婆と私は住んでいた。
老婆は脚が悪かったのでうろの中で一日家事をして過ごし、私は森で水汲みや食料の調達などをして暮らしていた。特に会話や心の交流らしきものは無かったけれど、私達は長い間そうやって平穏に暮らしていたのだ。
しかしある晩老婆から夕餉のスープを受け取ろうとしたとき、ふと私の頭に「この人は誰なんだろう?」という疑問がよぎった。どんなに記憶を遡ってみても延々と今と変わらぬ生活があるだけで、私とこの人の関係性が良くわからない。血のつながりのある人なのか?それともただの同居人?友達・・・ではないと思うのだが、親子じみた事があったようにも思われない。
なんだかとても気になって、初めて老婆の顔をまじまじと覗き込んでしまった。
どんよりと濁った目。鉤鼻。その下のしわくちゃの口からは黄色い歯が覗いている。・・・魔女だ。どうしてこのことに今まで気がつかなかったんだろう?
魔女は灰色の歯茎をむき出してにやりと笑っってみせた。背筋に冷たいものが走って、反射的に差し出されたスープ椀を叩き落として飛び出した。
逃げださなければ。とにかくここから離れなければ。
森の中をめちゃくちゃに走った。走って走って、ようやくたどり着いたのは見覚えのある大きな樫の木のある広場だった。うろから魔女がこちらを覗いてにやにやと笑っている。
「お前は自分だけ特別なつもりででもいたのかい?おまえも私と同じさ。いつか私が死んだらお前が魔女になってここに住むんだ。」
そう言って魔女は甲高い笑い声を上げた。
たまらなくなって広場に背を向けてまた走り出す。けれどもどんなに走ってもたどり着くのは見覚えのある広場なのだ。
一体私はどうすればいいのだろう。この森から出て行くことができない。帰るしかないのだろうか。いっそ魔女だと気がつかなければ良かったのかもしれない。
魔女の住む大きな樫の木から夕餉のスープの匂いがする。森がざわざわと揺れている。私は森と広場の境界線で立ち尽くしている。
・・・きな子を授かってから見た夢です。あん子のときも見たけれど、どういうわけか妊娠すると母の夢を見るみたい。夢の中では母は恐ろしくて不気味な老婆で、私は恐怖で逃げ出そうとするけれど逃げ切れないのです。このまま産み続けたら魔女シリーズの夢がどんどん増えていくのか?
そのうち「大家族chebu家」としてテレビ出演できちゃったりして・・・。
魔女の夢よりそっちの現実の方が恐怖だな・・・ヽ(;´Д`)ノ